- 井上 卓哉 (開成高等学校2年)
カザフスタンに出発する前は気候や食事面などを心配していたが,実際は特に問題がなかった.大学寮の部屋には冷房がついていなかったが耐えられないほど暑いわけではなく,夜は涼しくなるので快適だった.飲料水は十分に配られ,食事もまずまずだった.部屋は,日本選手 4 人で一つの部屋だった.シャワーやトイレも各部屋ごとにあったので大学寮にしてはかなり良い環境だったと思う.
コンテストは初日に一時サーバーが落ちたり応答が遅くなったりしたが,両日ともほぼ定刻に開始,終了し大きなトラブルはなかった.初日はマクロを打ち間違えるという痛恨のミスをしてしまったが,終了直前に気づけたので何とか金メダルを狙える得点を確保できた.2 日目は素早く 1 問目で満点を獲得したがそのあとはなかなか思い通りにはならなかった.コンテストが終わった時は金メダルには届かないだろうと思ったがぎりぎり取れたので良かった.
観光ではゴンドラで高山に登って氷河を見たり,サーカスを見たり,歴史村のようなところに行ってゲルを見たりした.どれも画像や映像では見たことがあったが,生で見るのは初めてだった.特に氷河はなかなか見る機会がないと思うのでとても良い経験になった.
閉会式後のパーティーではいろいろな国の選手と写真を撮ったりお土産をもらったりした.ほかの国際大会で知り合った外国人とももう一度話すことができてうれしかった.大会全体を通して,事前に思っていたよりもかなり快適でとても楽しく過ごすことができた.
最後になりましたが,問題の翻訳をしてくださった随行員の方々,IC の谷聖一先生にはとても感謝しています.ありがとうございました.
- 髙谷 悠太 (開成高等学校1年)
今年は IOI 日本代表として 2 年目の参加でした.
直前学習会ではアルゴリズムの高速化や canvas の使い方など普段あまり触れないことを知ることができ,準備は万端でした.翌日の飛行機でしっかり睡眠をとれるように夜更かしをしました.金曜日ということもあり面白い映画がたくさん放映されていました.
翌日,朝早くからの便であったため,前日の準備もあり,しっかり寝れるかと思っていましたが,前半の便で十分寝てしまい,後半の便で5時間ぐらい寝れず,暇を持て余すことになりました.
そんなこんなでアルマトイに着いたわけですが,そこは予想以上に暑くすぐにバスに入ったのですが,そこも冷房が効いていなかったため少し辛かったです.また,カザフスタンの通貨テンゲは国内では両替できず,両替してきたドルでテンゲを得るつもりだったのですが,空港で両替する間もなくバスに連れてこられたため,両替しなくてはならないのではないかと選手団であたふたしました.その件に関しては,ホテルや寮で可能だということで落ち着いたのですが,内心不安でした.
そこで,バスに他国の選手,といっても1ヶ国で,しかも同じ便に搭乗していた国なのですが,がやってきて,めでたくバスは出発しました.その国は韓国でした.韓国からは去年も出場していた選手が 2 人いて,残りの 2 人の選手も twitter などでお互い知っていたので,積極的に交流することができました.それは他の選手でも同じだったらしく,特に増田さんと Hanpil Kang さんが楽しそうに話していました.
到着した寮は想像していた以上にきれいで驚きました.実際,1,2 年前ぐらいに建てられたばかりの新しい寮だったらしいです.宿舎の外には公園があり,何という名前なのか知らないのですが,コーヒーカップのような遊具でチューターの二階堂さんと遊びました.他の遊具はすべて子供用に見えるのに,何故一つだけ普通の遊具があったのか気になっていたのですが,実はこの遊具も子供用であったらしく,他の機会に日本選手全員で遊んだ時にガイドさんの一人に注意されてしまいました.ただ,他の選手がそれで遊んでいるところは注意された後も含めて何回も見たので,あまり厳重ではないと思われます.
その次の日にようやく IOI の行事で重要と言えるものがありました.この日が IOI の始まりといってもいいでしょう.それは,Practice と Opening Ceremony です.Practice の問題はあらかじめ用意されており,解法も考えてきていたのですが,一問間違った考察をしていて時間内に通すことはできませんでした.他の問題でも思うような動作ができず,なんだか緊張している気分になりました.競技本番に不安を残す結果となり落ち着いていませんでしたが,Opening Ceremony が始まるころには平常心を取り戻すことができました.Opening Ceremony では現地語が話される場面も多く,何が話されているのかほとんど理解できなかったですが出し物や歌もいくつかあり,退屈せずに無事 Opening Ceremony は終わりました.
Opening Ceremony が終わるとついに競技の準備が始まりました.選手たちは団長団と隔離され,インターネットの利用を禁止されました.翌日には朝から競技が控えているので選手たちは早くに寝ました,と言いたいところですが,私が一番最初に寝てしまったためその事実は断言できません.しかし,少なくとも私に関してはそうであったと言い切れます.
さて,ついに競技が始まりました.まずは一日目です.二日目の競技までにある観光を気分よく過ごすためにも,ここはかたく点を取っておく必要がありました.しかし,結果は金メダルとれるかどうかの分かれ目の位置にいました.終わってみれば,二日目に無理な点数を取らなくても金をとるのには十分な点数だったのですが,当時の私にはとてもこたえました.参加する前から金は取れるだろうと高をくくっていたため,失敗しなくても金を取れる位置にいないことは精神的にきつかったです.とここまで言ってきたものの,うまい表現が見つからないだけで,実際はそこまでではなかったと思います.確かに,その夜には,最終的に銀でも仕方ないとしっかり現状を受け止めることができていた気がしますし.
そんな晴れない気分でしたが,翌日はちゃんと観光に行きました.なんと始めから山に登りました!登るといってもすべて登ったのではなく,山頂付近まではロープウェイで行き,そこから山頂に向かって歩いただけなのですが,標高は 3000m を超える高さであり,酸素が薄いのもあったのかもしれませんが,それ以上に寒く,山頂まではそんなにないのですが,それでも全部登ったら結構疲れていたのではないでしょうか.実際にてっぺんまで行きたかったのですが,ガイドさんたちが早く山を下るよう指示していたので,半ばで諦めることとなりました.
午後の観光ではサーカスを見に行きました.たくさんの玉を床でついたり,馬に乗って走る馬の上で一回転するなどいろいろな芸を見ることができました.特に印象に残っているのは,動物が出てきた後は少し臭かったのも印象に残っていますが,何と言っても早着替えでした.動画で見るとすごい時間をかけていて誰でも頑張ればできるように見えるのですが,生で見てみると予想以上に早かったです.早着替えに交えていろいろなマジックもあり,いろいろと騙されてしまいました.少し悔しかったです.
またこの日も選手と団長団は次の日まで隔離されました.
そして,IOI 2015 最後の競技が始まりました.初日の競技は途中 judge がとても遅れていたのですが,この日はサーバーに何の問題もなく,開始も遅れることなくとても快適な競技でした.一通り問題を見た段階ではHorsesしか解けそうな問題がないと思い焦りましたが,その問題を解いた後,Sorting と Towns のどちらを解くか考えたときに簡単であった方,すなわち Sorting を選んで,時間をかけながらもしっかり解くことができ,残った時間で落ち着いて Towns を考えることができました.Towns は乱数を使った不安な解法でしたが,何回か submit することで満点を取ることができ,なんとかこの日を満点で終えることができました.
コンテスト終了後 rejudge がかからないか不安でしたが,rejudge がかかることはなく,無事この日は満点で終えることができました.このころにはもう,初日に感じていた不安というのは消えていて,お昼ご飯のアイスクリームをおいしくいただくことができました.二日目の観光は気分よく迎えられたのですが,行く予定であった滝が危険と判断されていくことができず,ダンスをした後,博物館に行って終わってしまい,博物館の近くの大きな二人乗りのブランコに乗るぐらいしか楽しかったことはありませんでした.しかし,その夜,韓国チームとともにアルマトイのテレビ塔に行くことができました.そこでは,より深く交流することができました.韓国の選手たちは日本語を話せる人も多く,日本語で交流できて楽しかったのですが,日本選手が韓国語を話すことができず,双方向的な国際言語交流はなりませんでした.来年には少しは覚えていこうかなあと思ったのですが,来年まで覚えているのやら...という感じで,あまり真面目に考えていません.その前に来年代表にならなきゃいけませんね.
ということで,IOI も終わりに近づき,とうとう Closing Ceremony となりました.コンテスト終了後の順位表で確定したらしく,金メダルを取ることができました.その頃は体調がすぐれておらず,あまり内容を覚えていないのですが,メダルを持っていろいろなところで写真を撮りました.海外の選手とも写真を撮り,台湾の選手などと一緒に写真を撮りました.
その日の夜は farewell party で今まで話したことのない選手とお土産交換などをきっかけにして話すことができ,結構多くの人が日本のサブカルチャーに興味があるのだと知って驚きました.中には今年の 8 月中旬に日本に遊びに来る選手もいました.一緒に巡りたかったのですが,残念ながら夏季セミナーとかぶってしまったようで無理でした.
ついに,最終日はアルマトイから帰ります.とても楽しかったのですが,もう終わってしまうのはとても残念です.空港ではお土産にマトリョーシカを買いました.前日からの体調不良で 7,8 時間の便はこたえましたが,なんとか日本に帰って文科省を訪問するころには体調も戻り,今も元気に感想文を書いています.
IOI,そして,JOI の関係者の方々,ありがとうございました.これからもよろしくお願いします.
- 増田 隆宏 (筑波大学附属駒場高等学校2年)
・競技について
競技 1 日目は,teams が自分のかなり得意なタイプの問題だったこともあり,開始後 2 時間程度で 200 点を得られた.しかし,自分の不得意なタイプの問題である scales にかなり手こずってしまった.終了直前に運良くscalesで 45.45 点は取ることができたので結果としては悪くはなかったとは思う.teams で最初に満点を取ったのが自分だったと聞いて,別に早解き競争でないことはわかっているが嬉しかった.結果として競技 1 日目終了時は 245.45 点となりこの時点での順位は 13 位となった.
競技 2 日目は,時間配分や戦略において失敗したものの,どうにか挽回することはできた.towns で 25 点しか取れなかったのは悔しいが,競技 2 日目の点数は225点となり,合計で 470.45 点でした.競技 1 日目から順位は下がってしまったものの,16 位となり金メダルを取れたので嬉しかったです.
余談ですが,日本代表選手は去年も一昨年も 16 位を誰かが取っており,これで 3 年連続になるそうです.
競技 1 日目の結果,金メダルを狙えると確信したあまり,競技 2 日目に少し焦ってしまった面もあったと思うので,これについては反省したいです.
だが,自分の得意な問題は確実に点数を取れたと思うので,結果として自分の実力を発揮できたと思います.
・競技以外のいろいろなことについて
気候には最初は慣れなかったものの,競技が始まるまでには慣れることができたのでよかったです.
食事は思っていたよりおいしかったです.特にカフェテリアでは毎食,紅茶を飲むことができるようになっていてよかったです.
観光は本当に楽しかったです.IOI に参加するまでカザフスタンについてあまり知りませんでしたが,カザフスタンの文化やアルマトイの町並みがとても興味深かったです.
ただ,競技終了後ではあったものの,眼鏡を壊してしまい,どうにか使い続けたものの結構つらかったので,来年以降の参加者で眼鏡を使うつもりで,予備の眼鏡を持っていない人には,2 つ以上眼鏡を持って行くことをおすすめします.
他国の選手との交流も楽しかったです.日本の様々なものにおいて興味を持っている外国の選手が思っていた以上に多くて驚きました.
・まとめると
今回の IOI 2015 に参加できて本当によかったです.来年までは選手として参加するチャンスがあるので,来年も参加できたら今回の経験を生かしつつさらに楽しみたいです.
- 松崎 照央 (明石工業高等専門学校3年)
・競技の結果
競技の結果は銅メダルで,目標の金メダルには遠く及びませんでした.
・IOI の感想
直前合宿では,monge やビジュアライザーの使い方を教えてもらいました.結局競技では使いませんでしたが,monge は概念に初めて触れたので大変勉強になりました.初日は開催地カザフスタンのアルマトイに飛んだ後,登録を済ませました.初めての飛行機と海外に思わず緊張しました.宿泊場所は大学の寮でしたが,新しい施設らしくエアコンが無いこと以外は快適でした.二日目は特に予定がなく,大学内を散歩したりしました.三日目はプラクティスのち開会式がありました.プラクティスでは問題が 3 題出されました.あらかじめ問題は配布されていたので,内 2 つの問題については解法を考えており,残りの1つも直前合宿で解法を解説してもらっていたので,実装して終わらせる予定だったのですが,読み落としに気づかなかったり,バグらせてしまったりして 1 問しか通す事ができませんでした.競技には関係ないので困ることではないのですが,あまりにもバグらせてしまったため不安になりました.
開会式の途中で参加国の紹介があり,各国のアピール(帽子をバラ撒いたりとか)が面白くて印象に残りました.夜は寮の地下で伝統芸能やダンスを見たりしました.台湾の選手と交流したり,危うく踊らされそうになったりしてとても楽しかったです.
四日目は競技 1 日目でした.
五日目は excursion があり,午前は山にロープウェイで登りました.最終的には標高 3000m を超え,人生のピーク(物理)という感じでした.午後は都市に戻ってサーカスを見ました.サーカスというと古典的なピエロのイメージを持っていたのですが,今回見たサーカスは干支をモチーフにしたもので,ストーリーもあって二時間見ていて飽きませんでした.夜はダンスパーティーがあり,(カザフスタンでは毎日ダンスが開催されていた気がします.)この日は勇気を出して踊りました.正直ついていけませんでしたが,気分転換になりました.
六日目は競技二日目でした.この日に銅メダルが確定し,しばらく落ち込んでいました.
七日目は五日目と同様 excursion でした.高原に行ってカザフスタンの文化を見た後,博物館に行ってカザフスタンの歴史を見ました.教養が足りず面白みがわからなかったので,もし次このような機会があれば少し調べてから行こうと思います.夜にはアミューズメントパークみたいなところでヤギやロバ,ラマなどを見たりしました.トイレに行ったら 50 テンゲくらいお金を支払うことになってしまいました.ガイドのサニヤさんに払ってもらい申し訳ない気持ちになりました.他にも写真を撮ると 100 テンゲ取られる置物や,乗ると 200 テンゲ取られるブランコがあったりして「カザフではうかつに行動できないな~~~」という気分になりました.
八日目には閉会式がありました.四日目に自分が踊っていた姿が振り返りのビデオで流れて予想以上のキモさに一人大笑いしていました.表彰では銅メダルをもらい,複雑な気持ちになりました.
閉会式の後はパーティーがありました.色んな選手と交流してとても楽しかったです.お土産を交換するために折り紙を持ってきていたのですが,折り紙を配っていた時に英語で「折り紙の折り方を教えてよ!」と言われたのですが,鶴が折れず折り紙のセットに書いてあった簡単なにわとりの折り方しか教えられず申し訳ない気持ちになりました.来年以降の代表はもし折り紙を持って行くなら鶴の折り方を覚えておくことをおすすめします.
・競技の反省
競技の結果は 1 日目が 114.55 点,2日目が 200 点でした.1 日目はまず全体の問題を眺めましたが,どれも満点解法がわからず満点は絶望的ながらある程度点の取れそうなscalesに挑戦しました.6 つのおもりの大小を様々な秤で判定する問題で,秤を 6 回使ってできれば満点でしたがそれは明らかに難しく,7 回で出来ないか模索しました.おおよそ 7 回で出来る方法を思いついたのですが,一部が 8 回必要になってしまい,最終的に 55.55 点を獲得しました.この問題の実装は時間がかかった上バグってしまい,2 時間以上かかってしまいました.0 点のまましばらく過ごし,精神的にとてもつらくなりました.
その後自明な teams の 34 点を取り,終了一時間前ぐらいに boxes の満点解法に気づき実装にとりかかりました.バグらせつつ最終的に終了直前に完成し提出しました.しかし,バグが残ったままで 25 点しか取れず,75 点が霧の中に消えてしまいました.結果が判明するまで結構時間がかかったのですが,25 点だとわかった時は金メダルが絶望的になり,本当につらい気持ちになりました.一行変えれば通っていた状態で,本当に悔しかったです.この時点では銅メダル圏内で,せめて二日目で巻き返して銀メダルを取ろうと思いました.
2 日目は 1 日目と同様全体の問題を眺め,horses と sorting が解けそうだと思いました.sorting はやや難しく解法の正当性の証明が出来ませんでしたが,このままでは銅メダルということで,思い切って直感に信じて実装してみたら満点が取れました.ただ,実装が難解で時間がかかってしまい,この問題を解いた時点で二時間程度過ぎていました.horses も同様に満点を獲得しましたが,同様に時間をかけてしまいました.この時点で 2 完 200 点で,もしかして逆転金メダルの可能性もあるのではと思い towns について考察していました.33 点程度取れる解法は出来たのですが,実装を手につける時間が遅く,間に合いませんでした.これで僕の人生で最初で最後の IOI は終わりました.
銀ボーダーとの差は 10 点強で,boxes が満点だったか,scales でしっかり7回で判定ができていたか,towns の部分点が間に合えば銀メダルだったでしょう.しかしついに叶いませんでした.
この結果の原因としては,自分の考察の遅さにあると思います.春合宿の頃から,僕は問題の解法を見つけ出すのに他の代表や選手と比べて時間がかかっていました.他の人が数分で解法を見抜いた問題を自分は 30 分以上かけたなんてこともありました.同じ満点でも,ある人は 3 時間くらいで全て解けたのに自分が 5 時間ギリギリということもありました.当時は OI 系コンテストは時間が十分にあるし,最終的に問題が解ければ問題ないだろうと思っていました.実際,春合宿でこの弱点が点差に響いたことは,10 点の部分点を取り損ねるぐらいで,他は自分が満足する点はほぼ取れていました.
しかし,IOI では全体的に一筋縄ではいかない問題が多く,実装も春合宿の問題と比べて重めだったと思います.故に春合宿でギリギリだった僕の処理能力は IOI では通用しませんでした.この銅メダルもそれを反映してのことでしょう.
・最後に
カザフスタンで過ごした時間はとても濃く,出発前が遠く昔のことのように思えます.競技は残念な結果でしたが,それも含めてこの IOI は一生に一度の思い出になりました.もう選手として出ることはありませんが,この経験は今後の人生でかけがえの無いものとなると思います.JOI・IOI のスタッフの皆さん,チューターの皆さん,他の選手の皆さん,ガイドのサニヤさん,本当にありがとうございました.