一般社団法人情報オリンピック日本委員会専務理事として、第34回国際情報オリンピック (IOI 2022) インドネシア大会日本選手団に帯同しました。この大会は、3 年ぶりに対面(オンサイト)での開催となりました。しかし、完全なオンサイト開催ではなく一部の国・地域の参加者はオンラインでの参加というハイブリッド方式となりました。主催国はインドネシア共和国で、オンサイト参加の会場は古都ジョグジャカルタです。オンサイトとオンラインの両方の参加方法の選手がいる国もありました(ハイブリッド参加)。8月5日のデータでは、オンサイトのみの参加、ハイブリッド参加、オンラインのみの参加の国・地域の数は、それぞれ、62、8、18 でした。残念ながら諸事情でオンライン参加となった選手もいましたが、主催国インドネシアからの特別参加選手も含めると約 270 名の選手がジョグジャカルタの地に集まりました。対面での IOI が再開したと言えるでしょう。
オンサイト参加者が多いとはいえ、ハイブリッド開催です。その運営は、一昨年・昨年のオンライン開催やそれ以前のオンサイト開催以上の苦労があったと思われます。しかし、主催国インドネシアの運営チームは、しっかりと準備を行いとてもうまく大会を運営しました。オンライン参加の国・地域があるため、選手が関わる競技や役員が関わる GA meeting ・翻訳作業の実施方法も、オンライン開催の昨年の方式が踏襲された部分が多くあります。例えば、オンサイト開催だった 2019 年までの Grading system では、選手が提出した課題を評価実行は、選手が競技で使用している PC と同じ機種上で行われていましたが、2020 年からはクラウドサービスのインスタンスを利用しています。対面開催となってもこの流れは変わらないのではと推察します(そもそも、現在の新型コロナウイルス禍が収まっても、何らかの事情で対面参加できない国・地域や選手のためにハイブリッド形式が続くかもしれません)。GA meeting や翻訳作業では、Matrix プロトコルに基づきセキュアなコミュニケーションが行える Element というサービスを昨年に続いて今年も使用しました。このように、2 年間のオンライン開催の経験を活かして、IOI 開催方法も進化しています。
このようなすばらしい運営のおかげや、日本選手団役員のサポートもあり、日本選手は実力を発揮でき全員金メダルを獲得することができました。大会運営に携わった皆さまや、情報オリンピック日本委員会の活動をご支援いただいている皆さまに、感謝申し上げます。
IOI 2022 の競技や大会の様子は、選手や役員の皆さんの報告におまかせして、開催地に関連する話題に少し触れたいと思います。ジョグジャカルタは、インドネシアの首都ジャカルタと同じ南半球のジャワ島にあります。役員側のエクスカーションでは、
クラトンと呼ばれる王宮を訪れました。18 世紀後半に建てられ、それ以降この地域のスルタン家の王宮とのことです。今でも、スルタンが住まわれているとのことで、後から知ったのですが、ジョグジャカルタ特別州ではさまざまな経緯で現時点ではスルタンが知事を兼務しているそうです。GA meeting では、主催国組織委員会が推薦した方が議長を努めます。IOI 2018 日本大会(つくば市)では、筧理事長に議長をお願いしました。GA meeting の冒頭、議長の Gusti Kanjeng Ratu Hayu 氏が ”Princess” と紹介されました。そのときはよく分からなかったのですが、閉会式の挨拶で現スルタンの子であるとお話をされ、まさしく “Princess" だったのだとようやく繋がりました。インドネシアはイスラム教徒が人口の 85 %以上を占めていますが、イスラム教を国教としてわけではなく、他の宗教も尊重しているそうです。王宮には、ヒンドゥー教・仏教・イスラム教と 3 つの様式を 1 本に取り入れた柱がありました。
ボロブドゥールは仏教寺院ですし、
プランバナンはヒンドゥー教寺院ですね。Wikipedia の情報によると
Princess Hayu は、ヒンドゥー教に改宗されたそうです。こうして IOI 2022 のことを思い返してみると、少しジャワの文化の多様性と歴史の流れを垣間見れた気がします。