情報オリンピック日本委員会　春のセミナー

（終了しました）

2007年2月25日
情報オリンピック日本委員会

　情報オリンピック日本委員会では、情報オリンピックの普及・啓発を目的として、第６回日本情報オリンピック表彰式に付随する記念講演会を「春のセミナー」として催します。この講演を通して、多くの中学生・高校生が情報オリンピックに興味を持ち挑戦してくれることを期待しています。

講演要旨

• 生命の神秘を解く鍵 − ゲノムとコンピュータ、そしてシステムとしての生命の理解に向けて − 　　ヒトは、たったひとつの受精卵から始まって、細胞分裂を繰り返し、６０兆個の細胞からなるその体を間違いなく作りあげます。そして刻々と変化する外界に対応しながら生活を営み、子孫を作りやがて死を迎えます。生命は神秘の極みです。２１世紀、科学の最大の挑戦はこの生命の仕組みの解明です。前世紀の終わりに始められた「ヒトゲノム計画」はこの神秘のベールを脱がしていく手がかりを作りました。
  　その手がかりが、「ゲノム」とよばれるとヒモ状の超高分子物質ＤＮＡです。ヒトの場合、３０億からなるＡ、Ｔ、Ｇ、Ｃの並びになり、ヒトゲノム計画はこれを決めました。しかし、このことをよく「ヒトゲノムが解読された」といいますが、これは生命の仕組みについてのわけのわからないとてつもなく長い謎の呪文が得られたといったほうがよいでしょう。
  　どの生物もゲノムを持ち、そのＤＮＡにその生物を作るための部品情報（遺伝子）が書かれています。ヒトゲノム計画によって、ヒトだけでなく、植物、昆虫、病原菌など様々の種類のゲノムの情報を取り出すことができました。また、ＤＮＡの上で人間の個人個人の違いを調べるとある頻度で違いがあることもわかってきました。ある人にはよく効く薬が、ある人には強い副作用を出してしまうなどは、この違いによるものと考えられています。 　しかし、こうしたことをいくら調べても直ちに複雑な生命の仕組みが明らかになるとは思えないでしょう。遺伝子や遺伝子産物（タンパク質やＲＮＡ）は生命システムを構成する部品です。コンピュータでいえば、ボードにのっている個々の部品がそれです。これらの個々の部品の形や働きがわかっても、部品の結線とその作用がわからなければ、本当の意味で生命の設計図を読みとったことにはなりません。また、この設計図だけでは生命のシステムとしての働きが分かるわけではありません。システムを解析するためにはシミュレーションができなければなりません。
  　この講演では、私の研究グループが行ってきた研究をご紹介します。その一つは、何百もの遺伝子を系統的に破壊し、ＤＮＡチップとよばれるものを使って遺伝子の発現への影響を調べ、遺伝子という部品間の結線図についてシステマティックに情報を取り出す方法です。スーパーコンピュータを用いて大規模な遺伝子のネットワークを推定し、薬の標的候補遺伝子の効率的な絞込みに成功しました。もう一つは、Cell Illustratorという生命システムのシミュレーションのためのソフトウェア開発です。これにより、病態のモデル構築や遺伝子機能の予測などを可能となり、システムに基づいた医科学研究の新たなパラダイムを創ろうとしています。
  　生命の神秘のベールが脱がされていくとともに、薬の開発や治療法の開発、さらには個人個人のゲノムの情報に基づいた治療や薬の処方は、コンピュータを用いた生命情報システムと生命システムのシミュレーションなしには考えられなくなるでしょう。

講師の先生	（この写真は講演時に撮影したものを後日掲載しています）

講演タイトル	宮野悟 先生

会場案内

• 会場：　国立オリンピック記念青少年総合センター　センター棟１０２号室
• 住所：　〒151-0052　東京都渋谷区代々木神園町3-1（TEL: 03-3467-7201）
• 会場最寄駅：ＪＲ新宿駅から小田急線各駅停車で２つ目の「参宮橋」駅下車（約３分）。駅から徒歩約７分。
• 地図

お問合せ先

〒160-0022　東京都新宿区新宿７−２６−３７−２Ｄ
情報オリンピック日本委員会
TEL: 03-5272-9794　FAX: 03-5272-9791
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