情報オリンピック日本委員会では、情報オリンピックの普及・啓発を目的として、第7回日本情報オリンピック表彰式に付随する記念講演会を「春のセミナー」として催します。この講演を通して、多くの中学生・高校生が情報オリンピックに興味を持ち挑戦してくれることを期待しています。
「コンピュータに思考ゲームをさせる」という試みは、コンピュータが生まれる100年も前からアイディアの段階で考えられてきました。そして、コンピュータが誕生すると同時にチェスをプレーするコンピュータを作る!という目的を実現するために非常にたくさんの研究と実装が行われました。その成果が実った出来事が、1997年のニューヨークで起こります。
IBMのモンスターマシン「ディープブルー」は、当時の世界チャンピオン・カスパロフ氏に2勝1敗3引き分けで勝利します。このニュースは、世界を駆け巡り、人工知能研究の一つの大きな成果として語られることとなります。
本講演では、まず、コンピュータで思考ゲームを行うという試みについて、情報科学的な位置づけと歴史的な流れについて概観します。そして、チェスに続く形で行われているコンピュータ将棋、コンピュータ囲碁の挑戦について紹介します。どちらの分野もこの数年、非常に注目を集める技術が現れています。
コンピュータ将棋では、一昨年前にBonanzaというプログラムが世界コンピュータ将棋選手権に初出場・初優勝を果たし、その手法に大変注目があつまりました。評価関数の自動学習と全幅探索の手法は画期的なものでした。
また、コンピュータ囲碁の分野でも、一昨年前に現れたフランスの MoGo, CrazyStone が新しい手法で世界を驚かせました。これらのプログラムは、モンテカルロ法をゲーム木探索に応用したUCTと呼ばれるアルゴリズムを提唱し、この分野に一つの大きなブレークスルーをもたらしています。
これらの簡単な技術的な解説を行うと共に、コンピュータで思考ゲームを扱う楽しさを感じていただける講演を行います。